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Citroen Specialist Javel(2022年竣工)

シトロエンという新旧のフランス車を手掛けている会社

「Javel-ジャベル」

そのリノベーションの設計監理CMを担当しました。

新車も販売している会社ですが、主に、フランスの大統領の公用車としても使用され、映画にも出ている「DS」という車。1955年以来、特殊な昇降サスペンション装置を持ち、ふわっとしたその乗り心地は最高!今でもファンが後を絶たない。

建築家やデザイナーが乗っている「2CV」やマセラティのエンジンを載せた「SM」も有名だが「DS」など、流れる様な美しいスタイルがその特徴。60年以上たったいまでも部品を調達し、高速道路を突つ走る。1階は自動車修理工場でメカニックのためのゾーン、2階は事務所も兼ねたお客様のゾーン。今までは動線が混在し、部品の収納も整理しつくされているとは言えない状況を、改め機能分化に特化し、今後を見据える改修を行いました。

 

シトロエン ロゴマーク

 

前回の写真は建物先端部分の新設看板を写したもの。

シトロエンのロゴマークの変遷は多様だ。

新旧のシトロエンを扱う会社なので、どの時代のマークにしたらよいか悩んだが、最終的にはシンプルな1959年のものをベースにした。

さてどう作る?

港区の浜松町で開催された「付加価値ある意匠デザインを実現するものづくり技術2022」を見学した際、日双工業(京都宇治市)と出会う。

 無数の突起で覆われた大仏の頭のような表面処理ができる!と気に入り依頼、CADの立体図でお互い確認しつつ現代の職人技で製作してもらった。

形は1950年代、製作技術は2022年。大きさは75センチ角。

興味のある方は是非!ご連絡お待ちしております。

前回のロゴマーク写真

実際、車のどこについているか?

シトロエンDSにはこのような所に付いてます。

 

私と車について話すと

運転免許を取ったのは遅く、33歳の時

それまでは建築事務所を鎌倉で立ち上げたばかりで、財源も乏しく

ヤマハの50CCバイク「ラッタッタ」で専ら現場通いをしていた

運転教習所を紹介されたはいいが、実際は二俣川の試験場でテストを受ける。

坂道発進でうまくクラッチを繋げず、それがたたり、3回目の挑戦でようやく取得できた。

教習所を紹介した友人が黄色の「BMW2002」に買い替えたかったので、

その友人が乗っていた丸目の「いすず117クーペ」を破格で譲り受けた。

ワイドタイヤを履いており、しかもパワステがないのでハンドルが実に重い。

それを痛感したのが山道。記憶にあるのは長野県飯田市の大平宿を目指したとき。

当時廃村状態だが文化財級の家並が木曽近くの山間部に位置する。

カーブの多い山岳道路が大平峠まで続き、ハンドル操作に加え未舗装道路の

車のわだちで、腹を擦りそうになる。しかもライトが頼りの夜道、

轍に溜まった雨水を飲みに来たタヌキと出くした瞬時のハンドル操作など

苦労した思い出がある。この車は3000キロぐらいしか乗らなかった。

 

写真はジャベルにて見かけたDS。

1950年代に始まるロゴマークが車体に煌めく。

車の一部の画像で恐縮だが、部分を見てもこの車のデザインは優れモノと感じる。

そう、部分と言えば、建築家の情熱を仕込ませたものかどうか、建物の一部しか

見えていなくともわかるものだ。

眼は関心のあるものを目ざとく見つける。

フランス車、新旧シトロエン専門店「Javel」のリノベーション。

1960年創業の会社で(詳しくはhttps://javel.co.jp/)新車も扱うが、

訪ねると往年の名車がメンテナンスを受けていた。

 1階が自動車修理工場、2階は事務所となっていたが車部品の倉庫も兼ねていた状態。

また2階には小型のシトロエンが鎮座していた。

当初は自動車用エレベーターで2階にこの車を上げたそうだが、すでにその機能は失われ、

訪れた際は昇降スペースが簡易的にふさがれ、取り外し可能なスチールの床が設置され、

上には部品の箱が山と積まれていた。

リノベーション案では何度も練った結果、2階の車を下におろした後、

旧昇降路をそのまま維持し、上下階吹き抜け有効利用案が採用された。

1階リノベーション

前回ブログ595では2階から車を下ろすレのベーション工事初期段階の写真でした。

 今回はリノベーション後の写真で、前回とほぼ同じ位置で撮影しています。

 2階床の蓋を外して車を下ろしたのですが、

リノベーション後は蓋を外した後の空間を1階の作業空間の延長として活用します。

 既存のグレーの丸柱は他の新設鉄部同様べんがら色に塗り替え、

壁の一部はシルバー色のパンチングメタルを新たに使用。

 外部から見た際も車のメカニックな印象を与えるべく意図しています。

ブルー色部は機器で、床に見えているのは車の昇降装置です。

 

リノベーション2階部分エントランス廻りー

赤茶ベンガラ色の壁は右手に続き1階へ下る階段室となる。

赤茶壁は以前グレーであり事務所的なイメージが強かった。

今回、色彩表現としてはシトロエンのイメージを高めるため強く出している。

リノベーション前、白い収納部には、

重量のある金属部品がぎっしり詰まったスチールの棚が2台、

また丸柱右手の床梁の肩が白く露出している部分にも段ボール箱が積まれ、

さながらエントランス廻りは荷物置き場のごとくであった。

 

2階オフィスへのアプローチ

 

JAVELのオフィスは2階にあり、歩道から直接階段を上がる。

 

右手が入口、スチールのフラットバーで構成されたガラス壁面の部分がオフィスで

室内から人の出入りを自然に見て取れる。

 

リノベーション前、ガラス壁部は簡易間仕切り壁となって塞がれ、階段室全体が暗く、

画面左下、幅の狭い床部分(梁型)にも荷物が渦高く積まれ、陰気な印象であった。

べんがら色の壁中央付近のガラス壁との境部に既存ケーブルが露出しているが、

切り回しが不可であった。この処理については今後ご覧いただきたいと思う

ジャベル入口周囲

 

階段を上り入口を見ています。

通常は天井照明をつけていますが、右から入る自然光でもこの明るさがあります。

右手の壁にはリノベーション前からある鏡をそのまま利用し、階段ホールに視覚的な広がりを出しています。

事務所入り口であるサインとしてガラス扉には現代のシトロエンのマークをつけています。

道路から上がる階段室が2階事務所へのイントロとするなら、上り立ったここでさらに奥を見せ、次のステップへと誘導します。

中に入るとまずギャラリーになっており、奥の事務所エリアとは、光を通すパンチングメタルの壁で間仕切られています。

エントランス

これは入口手前ドアから奥を望む写真。

ギャラリー部が見え、色使いの多い楽しそうな絵が

飾られている様子。

エントランスギャラリー

 

展示しているのは

今村幸治郎さんの作品。

左はシルク、右は原画で鉛筆画。

絵の大きさを測り

あらかじめ壁にへこみをつけて

額を納めています。

エントランス見返し

エントランスギャラリーから入口を見ているが

厳密にはまだ完成ではなく、何かが加わります。

 

エントランスギャラリーといえど絵を眺めるゆとりを生み出す

落ち着きが少しあった方がいいな。

 奥に見える設備関連の配管は切り回しができぬ状況だったが、

とはいえそのままでは少し見苦しい。

何かの工夫が必要でした。

前回ブログ画像で、入り口わきの袖壁の延長に

左に見えるパンチングメタル製、透ける壁を設けました。

また同様に奥の事務室とカフェテーブルを隔てる壁も

パンチングメタルで透かします。

オフィスエリア1

左手がエントランスギャラリー、右手の透ける壁、後方がオフィス。

手前はカフェ的なスペース、

シトロエンオーナーや愛好者が集う。

突き当りの階段室内にもう1か所パンチングメタルを利用しています。

オフィスエリア2

パンチングメタルで仕切られ薄っすらと右手の壁が置くまで続く様子が見える。突き当りの壁はべんがら色、右側はグレーなのだが手前の障子は観葉植物の色を反射し、緑がかって見える。突き当りのべんがら壁中央に見えるパンチングは今回のリノベーションにあたって移動できなかったケーブルを覆っている。壁の赤、グレーにシルバーを加え「覆い」も違和感をそいでいる。

オフィスから見える階段室内のEPS

 

今回のリノベーションでは

設備関係のやり替えが難しいところがいくつかあり

このEPSもそのうちの一つ。

電気関係の数本のケーブルがあり移設困難のため

ご覧のようにパンチングメタルで覆っている。

台のように見える部分は梁型で

その中をケーブルが貫通していた。

車好きの集まる「カフェ」から奥を見る

 

奥のガラス窓からは中原街道を行き交う車の流れが楽しめ

右手のガラス壁は吹き抜けに面し、1階の自動車工場内を見る。

奥の椅子に座れば1階の自分の車の修理状況が眺められるわけだ。

天井の赤とグレーの段差は、もともと段差の付けざるを得ない状況を

尊重し、色分けし段差をより明確に表現している。

右手赤茶べんがら柱、手前のドアは、トイレ、部品ゾーンに続く。

日本の美を伝えたい 608 Citroen Specialists Javel

「カフェ」から奥のガラス窓を望む―その2

前回の写真よりも少し引いて撮影しました。

カフェテーブルと入口ギャラリーとの位置関係を見ています。

広角レンズでの撮影により、奥行きが実際より誇張気味なのが気になります。

が、敷地は道路が分岐する先端にあるので、

建物も敷地に合わせるとこのようにパースが効いてしまいます。

それを逆に利用し広く見せているわけです。

「カフェ」から入口ギャラリーを見る

 

右に1階からの階段室、中央に入口ギャラリー、その左はドアで

トイレや吹き抜け沿いの部品庫につながります。

白い天井は左手のガラス壁へと続きますが、そこで1段下がり

べんがら色の天井につながります。

 

みせるオフィス

今回のリノベーションでは従来の在り方を全く変えています。

収納場所を増やし整理し、部屋の仕切りを極力抑え一つの大きな部屋としてとらえること。

衝立で軽く仕切る必要があってもパンチングメタルを使用し

透ける空間にして向こう側とつなげる。

 以前は湯沸室があったが、今回はそれをなくしオフィスカウンターの上にその機能を設けた。

写真は、通常洗面カウンターに乗せる衛生陶器だが

スパウトの低めのものを選び周囲に書類があっても水撥ねを抑えている。

窓には障子を加え自動車工場のオフィスから連想するような

事務所インテリアから離れるとともに空調の効率化も狙っている。

 

この吹き抜け部分、リノベーション前は自動車の昇降用エレベーターが設置されていました。

その後鉄板でふさがれ床として利用され、部品の段ボールが山と積まれていました。

 リノベーションで吹抜けを有効活用し、スタッフが2階のトイレを利用できるようそこに階段を設けています。

 ただの階段ではなくトイレまでの道行きに部品回廊を設けたり、スタッフルームを設けたりし、

効率化とスタッフ待遇のレベルアップを試みています。

 赤い塗装部分はべんがら色で埋め尽くします。自動車と鉄、べんがらの場合は鉄さびにも通じ、酸化第二鉄なのですが

自動車を構成する鉄でショウルームも構成されるイメージとしています。

「カフェ」から中原街道を望む

 

クライアントが時間をつぶす際、大通りを行き交う車を眺める場所。

壁は新たに作り替え、ボードの小口を見せ既存のサッシとなじませる。

その下のパンチングメタルは照明のカバー。

パンチング、今回のリノベ―ションでいたるところで活用されている。

トイレもリノベーション

 

今回のリノベーションでは

グレーと赤と白の三色を使って全体の壁や天井など

インテリアを構成している。

赤は車に通じる鉄のイメージ、ここではドアのハンドルと

手洗い器のあるカウンターに施す。

白は天井と換気扇、トイレ、障子のワーロンシートで構成。

建物のかわいらしい模型

 

タイトル通りのかわいらしい模型がおよそ

15センチ×15センチのボックスに収まり、おまけに雲までが浮かび

製作者の独特な世界観がにじみ出ています。

お客さんに作ってもらった様子、シトロエンへの愛情もこの建物模型に注がれているように思います。

40年前の新築時は壁の色が薄い茶色で、耐火被覆が施されている丸い柱も白。

現在ブルーの壁の色もオーナーは塗り替えをお考え?ですが、

今回のリノベーションで内部の構造体と新たに加えた部分とを

べんがらの赤茶で塗分け、

外部からその様子が見て取れるデザインにしたので、

外壁の新たな色も内部を意識したものになるでしょう。

外部と内部

今回のリノベーションでは、以前2階に車を上げる為に使用していた昇降エレベータスペースの立体的有効利用が要となった。

そこに部品収納庫を陳列させスタッフの作業効率を高めた。

その様子が外部からも見え、自動車工場でもありショウルーム的な存在でもあるJAVELの企業イメージとも重なることを狙う。

写真は昨年秋に取ったもの。赤茶のべんがら色の構造体と内側からガラスを覆うシルバーのパンチングメタルも

職人的なメカニックのイメージともつなげる。

夜の外観

中原街道からの外観です。

1階の自動車工場や2階のオフィス、倉庫を透かして

見せ、このように外に開放的なショウルームとなっています。

吹抜けを利用した鉄骨階段の様子、パンチングメタルで覆われた2階

のプライベートゾーンなど。

働く方々の気分が少しでも変わるといいなぁ。

Citroen シトロエン

シトロエンDSがこの車の名称

詳しい紹介はネットにゆずります。

見ていて面白いのは、高齢の方にやさしい低床バスのごとく車体が

駐車時ゆっくり下るところ。

写真は走行時の車高。後ろのタイヤは半分隠れているが

駐車時はさらに下がる。

車体はシンプルな流線形、後ろのタイヤハウスがそれを強調する。

ラインを強調するため後部のウインカーはトランク部から離れ

屋根についたラッパ型がそれである。

最近の車はより複雑な細工が可能となって個性を出す魅力もあるが、

70年後の今に、シトロエンはいまだ人をひきつけてやまない。

近づいて中を見る

 

するとこんな感じです。

よく「魔法のじゅうたんのような乗り心地」とシトロエン車が評され「ハイドロニューマチック」といわれるサスペンションシステムを差すことが多いのですが、ご覧のようなフカフカのシートも影響しているのでしょう。

低めの車高、大きな窓からの眺め、ゆったりとクルージングを楽しむ車ですね。

Citroen DS のフロントビュー

 

ジャベル前にて撮影。

広角レンズのせいか

だいぶデフォルメされ、座席が

後ろに移動したかの様に見えるが

もしかすると

イメージはこの方が伝わりやすいかもしれない。

存在感のある車である。

いまだにファンが多いことも納得できる。

クライアントに品川駅まで

他のDSで送ってもらう途中

信号待ちで停車

横断歩道の人々の視線を浴び、

近づく方も。

工事後のJAVEL

 

2階へ車を運ぶ昇降エレベーター撤去後の吹き抜け部の画像。

車や修理部品、工具などが所狭しと置かれている。

よかったのは壁のパンチングメタル、細かな部品も穴に引っ掛けつるす。

その後に加えられたものもある。

外を行く歩行者の目を楽しませるべく、工具や部品などを窓辺に飾るように、

とドイツ人スタッフの意見も反映。

リノベーション後のJAVEL

 

外を通る歩行者からも中が見え,

興味を引くものが陳列してあったらいいな!

 

たまたまドイツから来ていたエンジニアのつぶやきでできた棚。

厚みが3ミリの鉄板で構成している。

華奢だがどうして重いものを載せても撓むことはない。

上部には置き所に困るバーンパーがのっかっている。

その上を見ると外観上引き立つパンチングメタルだが、

内側には日よけスクリーンとして機能している

工事後のJAVEL

道路側に小棚を追加

前回は正面から棚の薄さ3ミリを感じてもらいましたが

横から見るとこんな感じ。

水平の棚ラインを強調するため垂直の鉄板は少し奥まって

取り付けています。

上部は天井に見えますが、奥行きのある

バンパーを載せるための棚板になります。

吹き抜けを下から見上げると

 

リノベーション前の様子が多少うかがえます。

中央の床に穴が開いているところは2階の床になりますが、

鉄板でできており補強の角パイプが取り付けられ

その2か所にキャスター(小さな車)がついているのがお分かりかと思います。

吹き抜けをふさぐ際に重い鉄の床を移動させる際に転がす目的です。

 今回その鉄板6枚の内の1枚を残し2階の床に転用しているわけですが

以前からあったものを

新た使い方でよみがえらせる「再利用の魅力」の一つになればと思います。

なお

左手のパンチングメタルの裏手は部品庫、

右奥は2階トイレを経由しオフィスへつながります。

前回の穴の開いた床を見ています。

真下に来て見上げるとこんな感じです。

絵になりますね。

JAVELは今回で一応終了します。

長い間ご覧くださった方に感謝します。