新築住宅

「わびさび庵」(2016年竣工)

 

横浜市内に建つ「わびさび庵」の紹介です。

 

画像右の建物が以前紹介したべんがらCa邸、

その左に離れの「わびさび庵」が建ちます。

名前の由来は

少ない予算、しかし質は高い

しかも和の雰囲気を持つところからきています。


母屋のグランドピアノ越しに見た庭の様子です。

奥のブルーシートのあるあたりに「わびさび庵」を造りました。

全体の大きさは1階、2階あわせて7.5坪。

母屋を建てたのは4年前、当時は3世代の住居として計画しましたが

ご家族の変化もあり、いざ同居するとなると手狭になり

今回の離れの登場となったわけです。

建て主は「小屋を作ってくれればいい」的な感じ、、、

でしたが出来てみると、そうとは呼べない顔をしています。

この母屋と離れは上から見るとL字型の配置で、庭を囲みながらも

離れを奥にずらす事で庭に光と風を呼び込みます。

 

 

奥行きの浅いデッキテラスは建て主がご自分で工事を行いました。

以前もコメントしましたが、同じ敷地の母屋建設の際は天井、壁などのべんがら塗もすべてご自分でなさいました。

塗装が専門というわけではなく、およそ、かけ離れた職業に携われています。

ただ人の集まりも多く、庭に小規模の建物を建て、既存の母屋とともに庭を囲み「中庭」のような落ち着きを持ったスペースにし、皆とともに庭で過ごすことも設計者として考慮しています。

また母屋とは直接廊下でつなげているわけではないので、離れの人はサンダルをはいて母屋に行き、食事と、入浴を行います。

子供の頃よく訪れた母方の山梨の郷ではトイレが外にあり、夜は怖さとともに星の輝きも心に残る体験をしました。

今は1,2階とも母屋の延長として使っていますが、わびさび庵も将来的には、ホームステイに、貸室に、と、離れていればこその使用法も生まれて来ます。

囲まれた中庭の一方はご覧のように斜面緑地。保存樹木もあり中庭に日陰を作っています。

庭は暫時的なもの。これから本格的に庭師たる建て主が行うわけでこれとはまた別の風景に生まれ変わるでしょう。


 

この画像で目に付くのは? (実は工事中で完成前の画像です)

そうです!屋根の裏側になる部位、軒裏です。

箱型のモダン建築は軒の出がなくなりましたが、軒の裏を見せる事も消えてしまいました。

屋根の雨水が排水溝を狙って落ちるよう軒は1.2m近く出しています。

そのため垂木の先端側を削り、かつ赤銅色のべんがらを塗装して軒裏に陰影を作り、あたりに庵としてのわびさび感を醸し出しています。

何本もある垂木のうち1本だけ太いものがありますが、このライン上に間仕切り壁が 来ることを表しています。

庵としてのわびさび感を醸し出します。

 

玄関を入るとこの光景、いきなり階段です。

ですが、玄関から直接2階に行けるので 1,2階どちらかを貸すこともできます。

左側の部屋は6帖大の個室、2階はトイレや階段室スペースを除くと 4.5帖の個室が残ります。

延べ面積7.5坪これを設計監理、分離発注費を含め 予算数百万で行う。

壁はプラネットジャパンのフェザーフィール。

下地のコバウ紙でも十分仕上げとして通用するが その上にフェザーフィールの薄塗をしています。

壁の際沿いは刷毛で、中央部はローラーで行いますが 下地紙貼りはプロが行い、 フェザーフィールは建て主の施工です。

素人の施工で、ここまでできるのかと思うほど 立派な仕上がり。 自主施工向きの素材です。

 

1階の部屋の北面を見ています。

突き当りの壁は前回の画像でも 入り口の隙間から少し見えていました。

天井は構造材をそのまま室内に現す、 グレードの高い空間です。

ベンガラと構造材とで陰影を作り シックで落ち着く空間にしています。

『白壁と赤茶のべんがらとの対比が スタイリッシュである』とは別の建て主の言葉ですがこの画像に当てはまります。

わびさび庵のオーナーは母屋に引き続き 白壁塗りと天井のベンガラ塗装もご自身でなさいました。

母屋での慣れもありだいぶ腕を上げています。 床は杉板の15ミリ、幅木はアルミ、それぞれ組み合わせ 素材感をだしています。

木、塗り壁、伝統的なべんがらという自然塗料(顔料) それに竹(サッシの上)で作る部屋は人にどのような感想を抱かせるのか アンケートを取ったところ 落ち着く、 リフレッシュできる、 天井が高く感じる、 暗さは夏暑いとき涼しく感じる、 和むとあります。 これは 自然素材もさることながら人の手、施主や職人たちの手間があぶりだされているから、 だと思います。

 

1階個室の、入口方向を望む画像です。

玄関から一気に2階に上る階段は、おしゃれな裏側を見せ、 入口引き戸は戸当たりとなる柱の面で納まり、 隣り合う壁のようなたたずまいを見せます。

庭側のサッシは3本レールなので、3枚のサッシを1か所にまとめ より大きな開口が取れ、庭との一体感を強めています。

 

前回の画像左手に見えていた階段の奥を覗いています。

奥から部屋側にせり出してくるような動きのある 螺旋階段といってもいいでしょう。

『奥なので見えないから塞いで見えなくした方が良い』という考えもあるかもしれません。

たとえ荷物で埋まろうともギャラリーなど、この部屋はいくらでも転用は利きます。

したがって階段裏は見せる前提で作っています。 制作した大工は早くて、若くて!うまい!

 

内壁は施主の自主施工であることは 以前伝えました。

さてその出来栄えはどうでしょうか ブログの172、光のさしているところを拡大しました。

仕上がりは多少粗面ですが、一番目立つ光の条件で ここまでの仕上がりですから完璧といえます。

なお床に接するアルミ幅木とのチリ(アルミの縁と壁仕上げとの差)は2ミリほどで 普段は存在を感じないがこのように日の当たり方で際立ってきます。

これは掃除機から壁を保護する意味と、実はもう一つあります。

 

今回はこの画像ですが ブログ173とほぼ同じ!

異なるのは外と、入口など、開口部が しまっていることです。

昨日のアルミ幅木の話は終わったわけでなく ここから始めます。

中央右手、 入口の白い扉に注目しておいてください。

 

昨日からの続きです。

扉に近づき開けてみた時の写真です。

私の足を写しているわけではなく扉の下の方に注目しています。

なるほど 引き戸を締めた時、建具を受ける枠材が この写真には見当たりません。

元通り締めると壁に直接扉が当たり 壁を傷め、扉の跡がつくはずです。

ところがそうはならない。

 

壁よりもアルミ幅木のほうが2ミリほど出ているので 戸は先に幅木にあたり、止まります。

つまり幅木が『戸あたり』!なのです。

2ミリのチリというと写真のように壁まできちっと 閉まっているように見えます。

枠をつければ済む話ですが ブログ172のように枠をつけないほうが すっきりし、広く感じられるよう様になります。

 

では 2階へとまいりましょう。

梁に赤のベンガラを塗っています。

木目がシルバーに浮き出ているところが ベンガラの特徴になります。

布で乾拭きすると鈍色のてりが加わる独特の 塗料です。

階段はべんがらを塗りません。

視力が弱ってくると濃い色の場合、足元が不安になるからです。

 

階段を昇っている状態の画像です。

前回の画像と比べると ベンガラの色つやがよりはっきりしています。

梁の上部には壁があって下が透いている そんな様子も見えます。

右手には窓があり 階段を明るく照らします。

手すりの固定には 金物を使ってない様子がわかりますか?

 

手すりの固定はこんな感じです。

壁下地と、手すり棒に堅木の込栓を入れています。

金物ではないので 目立ちません。

ただ 込栓に欅やチーク、黒檀など色のついた木材を使いアクセントとすることもあります。

 

左下の1階から階段を上り 2階の床へとつながる様子を 見ています。

階段が回り込んでいるところは 1階ではどう表れているか?

172,173,174のブログでわかります。

ところで 大工さんの腕が見事に表れている箇所がこの画像にありますがどこだと思いますか?

 

少し角度を変えて 前回と同じ位置からみています。

その回答です。

2階の床に框という角材を手前側と側面側に 廻していますが その木目が連続しているということです。

もとは長い1本の材でそれを折り曲げたかのように見せているところが 凄いところです。

いわなければ普通はわからない

あるとき、ハッと気づかせるところが粋で、 わびさび庵に ふさわしいディテールです。

 

2階へと最後の段をあがったところです。

正面は簡易な洗面とトイレ、 右手は個室。

1階の個室の住人は 2階のトイレを使います。

離れであっても1階には人が集まることもあり、 そのようなときにも気にすることなく、 用を足せます!

 

前回のトイレ入り口を背にして階段側を眺めた写真です。

2階建て延べ7.5坪の庵。

2部屋とトイレ洗面玄関を仕込むと狭さを感じずにはいられない。

そのような時、1階と2階を結ぶ 階段のあり方が大切です。

ブログ183や182にあるように 手すり壁の下部を透かし、向こう側を見せる、 あるいは画像のように柱を階段の中央に立て 空間を引き締める。

そして、天井にベンガラを塗装し 陰影を漂わせ、天井の所在をあいまいにしてしまう。

窓は控えめにして光の量を絞る、 などで奥ゆかしさと広がりを感じさせます。

 

右のトイレの引き戸は締めて 階段室全体を見ています。

工事中の現場を眺め、どうも、階段の中心に柱があって 上の梁でそれを受ける構成がこの空間にふさわしい!

と思うようになって、現場変更。 但しほかの梁の大きさをそがぬよう 控えめな寸法に。

ちなみに、柱は6センチ四方と細身。 受ける梁は9センチ四方の断面にしています。

手すり壁上の笠木は4センチの厚み。

細身の柱を置くことで奥ゆかしさを出し心理的な広がりを得ています。

 

前回の画像は階段室を正面から見ていましたが 今回は少し斜めから望んでいます。

階段中央の柱と梁との関係、壁の中に入っている 桁や、梁の関係が立体的に眺められます。

梁にはプレカットの段階で梁に溝を切り 建具のハンガードアのレールを埋め込んでいます。

ドア枠などの煩わしいものを取り払い、シンプル、かつ洗練された美しさを見せています。

それにしても、建築主の自主施工エネルギーには感服します。

それがなかったら、白壁は石膏ボードの黄土色の紙が見え 赤べんがらの木部は白木のままで、工事途中の様相を呈していた 、、、のですから。

 

ブログ186の画像を引いて部屋全体を入れて撮ったものです。

ところで訂正を一つ。

前回のブログで建て主が壁の仕上げを行ったわけですがこのようにうまく塗れるには、わけがあり それをお伝えするのを忘れていました。

白壁の下地は石膏ボードには違いないのですが その上にすでにkobauコバウという塗下地用の壁紙が張ってありました。

だから素人が塗っても、こうもうまくゆくわけです。

なにせ、現場監理の最中 この壁紙を貼ったときは、 もうこれで十分! 汚れさえ気にしなければ、 と思うくらいきれいでしたから。 クロスを張った方も職人そのもの。

腕の良さは技能グランプリ入賞で実証済みです。

ところで窓の外には屋根が見えます。 部屋の天井はそのまま屋根(軒)となって外部に現れています。 室内にある要素が外にもあること。

これによって 外も内に取り入れた広がりが出てくる、 内外の一体感を出すテクニックです。

 

 前回画像右手の窓を見ています。

天井の垂木が外まで伸びているのがわかります。

外の緑とべんがらの赤が白壁の中に浮き上がります。

 

窓廻りをすっきりさせようと

窓台は木(ワトコワックス仕上げ)、壁は白壁を回し、

額縁といわれる木は付けない。

 

問題はサッシ上で梁の底を見せたいのですが

ここは必ず隙間ができます。

が、このように

黒竹を埋め、さりげなくカバーします。

 

188の写真とは逆の方向を見ています。

こちら側は南西にあたるので

午後の日差しが豊かに入ります。

夏場はかなり日差しが強いので

窓は少し絞って熱と光を制御、

茶室の感覚に近づけます。

 

それにしてもベンガラの色は

不思議です。

赤に近いほうだが

このように紫に見える。

そしてロフトには陰影を醸し出し

部屋に広がり、奥行きを与えます。

 

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