新築住宅
神奈川大和W邸 (2009年竣工)
神奈川県大和市(やまと市)に建つ住宅
付近は昔からの農家が点在する土地柄で
緑豊かな竹林も手に取る位置にある。
森へと続く畑に囲まれた家といった方が良いのかもしれない。
畑に面する住宅はここ一軒のみ。
画像は土のままだが
畑にねぎが育てば一面のグリーン越しに見える住宅、
となり、かなり目立つ。
それを意識しつつ建物と環境とのつながりを考えていった。
2階バルコニーやその下、
建物沿いの屋外スペースなどに立つと、
周囲に広がる緑との一体感を味わう事が出来る。
2階バルコニーと片流れ屋根の軒は
建物に深い陰影を創っている。
軒は壁から手前に2mはねだし、
バルコニー中央の外側に立つ一本柱が、
はねだし部分を途中で支える梁を受けている。
屋根の角度と軒の出は冬の日差しをたっぷり取りいれ、
夏の日差しを最小限に押さえる寸法。
山梨のバラ園の家
(鎌倉設計工房ホームページトップ画面の
最上段位置の住宅です。)
で好評だったので今回もここの比例寸法を踏襲。
そのせいか少し感じが似ている。
前回の写真は正面南側から見たが今回は横西側から見た画像。
2mの軒の出のイメージやそれを支える一本柱の様子が分かる。
道路に面しているので、
この西側は閉鎖的なつくりとなり1階の窓の所在が分かりにくい。
ベンガラ塗り大和張りの板をそのまま格子に見立てているせいだ。
良く見るとガラス部分は黒く光っている。
むろん夜間となれば室内の光が格子の隙間から漏れ、
淡く周囲を照らす。
左端の奥に抜ける部分が玄関ポーチ。
その上の雨樋は厚手のアルミアングル。
先端で少し薄手のアングルをかさね、
さらにはねだし雨水を外壁から遠ざけている。
2階バルコニーからの眺め。
ご覧のように那須リゾートに建つ家!
といってもおかしくない環境。
神奈川の県央地区となれば
このような緑の多い地域も残っている。
その緑を満喫するようなバルコニーである。
広さは10畳大。
南に回りこんだ部分も入れると12畳半となる。
階下にもコンクリートのテラスがあるので
その採光も兼ね床は格子にしている。
また夏の午前中一時的だが床の格子の隙間から
1階の居間に直射光が入る方向に透かしている。
白い帯状の部分はバルコニーの骨組みの梁にかぶせた
ガルバリュウム鋼板。
床に幾何学的な変化をつける。
手摺はスチールのフラットバー。
左官仕上げの外観と、
スチールとでは同じ白でも素材が違えば色味は異なり、
スチール部は2度塗装している。
鉄ゆえに手摺は重く、
近くまで車を寄せて機械で持ち上げたが
いちどきにセットできず、幾つかに分けて固定した。
が継ぎ目が分からないほど優れた仕事をしてくれた。
この手摺模型段階では乳白色のパネルであったが
透かす事で結果的にゴージャスな印象になっている。
軒裏や床など木部は現代のベンガラ塗装。
手摺の出来栄えをほめたが前回の画像では、
はっきり伝わらないと思い今回はかなり近くで眺めた画像。
継ぎ目が分からぬ程の仕上がり状況が
お分かりいただけると思う。
屋根の張り出し部を支える一本柱とバルコニーとの関係、
ベンガラ塗装の状況、
バルコニー床格子の隙間から漏れる光の様子、
階下の明るさの程度なども分かる。
だが3Dの映画ならばともかく、
画像には限界があり臨場感の表現までには至らない。
先日メールを戴いていた新築予定の施主をお連れして
2箇所の仕事を見ていただいたが
ホームページやブログの画像と実物とはかなりの開きがある、
現場を見て良かったとのこと。
やはり実物の前に立ち、眺め、
ベンガラの壁に触れてみるのが一番大切なことだ。
大和の家の外観、かなり変化に富む。
したがい東西南北をグルッと回って歩くと
形が刻々と変化し、面白い。
北側屋根の納まり方、樋のあり方、北側の緑を眺める大型窓、
玄関の格子戸、などの様子が分かる。
1階外壁はいつものようにきずり板
ベンガラ塗装であるが、
今回は耐候性により配慮した油性のものを使う。
従い本来のベンガラとは多少離れる。
屋根はガルバリュウムで、
鼻隠しを延長してそのまま下屋の様に下げた。
その下部に板金を立ち上げて樋としている。
完成まじかの画像で外まわりの工事はまだなされていない。
大和の家、四角い箱ではなく外観に変化がある。
この角度が意外と面白く気に入っている。
帽子のような屋根、「一つ目」の白壁、黒い板の壁、
隙間からはガラスが光りシュールなイメージ、
カメラのせいで画像は後ろに倒れているため
大きさが分かりづらい。
窓の寸法は竪横とも1.2mある。
壁も屋根より大きく見えるが、実際は逆である。
まじまじと画像を見て気が付いた。
コンクリートと木造の違いこそあれ、
コルビジェのロンシャンの教会に似ている?
京都の町屋をご存知だろうか。
間口が狭く奥行きが長い、「うなぎの寝床」的な敷地に建ち、
道路に面した格子戸を開けると敷地の奥へと続く土間があり、
途中、中庭を経由して最奥の庭へと続く
京都の特徴的な住宅形式である。
中庭から直接カマドのある台所に入り、
奥へ進むと風呂場があったり、蔵があったり、
通り庭と呼ばれるこの空間は魅力に富む。
この大和の家。
野外での活動が多いため、
汚れたままの姿で勝手口土間から室内に入る事も多く、
洗濯機に汚れた衣服を突っ込み、
そのまま洗面所、浴室へと直行できる。
そんなプランを建築主は望んだ。
頭に浮かんだのが京都の町屋である。
画像突き当りの格子戸は玄関ホールとの仕切りとなっている。
3枚ある格子戸のうち右側2枚が玄関ホール土間に面するが
左端の格子戸はフローリングの床へと続く。
通常、客人は左端の格子戸を開け
リビングダイニングへと入る。
が家族は右2枚のうちどちらかをあけ、
画像右側に壁のごとく並ぶ水屋、
その裏側の階段を上がり2階へと向かう。
階段上は吹き抜けており隣地の緑を楽しむ特大の窓がある。
画像右上部が明るいのはその効果。
統一感のあるキッチンと水屋は
ともに大工と建具屋の合作であり、
水屋には扉内にIHクッキングヒーターと
換気システムが仕組まれている。
また右手前の引き戸を開けると先述の勝手口が現れるという、
用途に対応した仕掛けなど
町屋空間の豊かさに富む住宅である。
前回の画像で右側に立ち並んでいた水屋ダンスを
リビングダイニングから正面に見た画像である。
水屋ダンスの長さは約3.6mであるが扉一枚ごとに
左から食器棚、IHヒーター、勝手口、冷蔵庫置き場となる。
勝手口に通じる扉は開かれ明るくなっているが、
すべて扉を閉めると水屋ダンスのようになる。
左側の格子戸は玄関ホールへ、右側は洗面所へと続く。
リビングダイニングは座敷の生活で、
白い腰壁裏のキッチンに立つ人と
視線のレベルを一致させている。
中央上の斜めの手摺が現すように
水屋ダンスと突き当たりの大型ガラスの間に階段がある。
この階段室部分が吹き抜けている為、
撮影場所から大型ガラスを通し
隣地の樹木を座して望むことが出来る。
今回は階段側からの画像です。
左側の手摺が階段の登る方向を示しています。
画面下の箱状の部分が水屋、
2階廊下を支える梁の飛び出している部分下がキッチンです。
大きく見るとキッチンが階段室の吹抜け空間の中にある
といったインテリアです。
町屋ですと吹抜け高所に煙出し窓があるのですが、
ここでは水屋ダンス内の換気扇で外に引き出しています。
2階奥に見えるのは個室、仕上げは白木のままです。
水屋ダンスの上に白い部分がありますが、
ここには照明器具が仕込まれています。
夜間ともなれば吹抜け全体をライトアップします。
階段踊り場からの画像。
踊り場の床はそのままキッチンまで伸び
水屋ダンスの天板となっている。
天板の一部、白い帯状部分が照明器具で天井をライトアップする。
右端には付近の林を眺める2m×2mの窓。
2月19日付けブログ写真で
一際大きく目立つ窓がこれです。
2階廊下手摺が左上に見えるが、
その下に1階の玄関ホール境の格子戸、
その奥に玄関太格子戸が欄間を通しわずか望める。
内部は柱、梁など構造材をベンガラで塗装、
漆喰壁と対比させた日本の伝統美をそのまま表現している。