新築住宅
神奈川保土ヶ谷区S邸 (2011年竣工)
前回のH邸も敷地条件が厳しかったが、
今回も同じくいや更に厳しい、といった方が良い。
画像中央の住宅がSa邸だが右隣の草の生えた敷地は隣地である。
コンクリートの巨大擁壁に斜面がのり、
道路はさらにその上にある。
ただ道路は左に行くにつれ
敷地との差は徐々になくなってゆく。
右隣の敷地が最も道路との落差が大きく5メートルもあろうか。
従いこの落差と斜面との付合い方が計画のポイントになってくる。
道路沿いの住宅の多くは
2階玄関アプローチとなっていて
1階の道路側はコンクリートの擁壁となって窓が付かない、
また地面と接するところもあり湿気対策も必要である。
Sa邸の場合、画像のように道路側には2階しかなく、
1階部分の道路側は吹き抜けにして斜面地をそのまま残している。
これにより、明るく風通しがよく
斜面を利用した庭に出られる構成になっている。
道路とのレベル調整のため、1階部分の基礎を高くとり、
1.4mの天上高を持つ床下物置としている。
前回画像でコンクリート擁壁ばかりが目立っていたが
その足元にはこのように川が流れている。
と同時に擁壁の巨大さや建設敷地の困難な状況も
お分かりいただけるのではないかと思う。
斜面地はうまく利用すれば、
景観、風通し、日照等有利な条件を備える。
実際当敷地の風のあたりは強い。
早く隣地に建物が立ってその盾になって欲しいくらいだ。
画像から大分川側に建物が寄って来ていて、
安全性が気になるが建物自体の基礎は
2階と1階とが地面の下で結ばれている。
コンクリート擁壁手前張り出しのように
30度程度の勾配で、1階と2階の基礎が結ばれている。
路に立ち眺めると、こんな外観になっている。
傾斜地に建つがゆえに、このように屋根がよく見える。
一段高くなっている部分には断熱材が入り、
屋根の棟部分で換気が行われている。
断熱材の有無で屋根の仕上げを変え
タテと横のラインでコントラストを出し、
上から見られることを意識したデザインとしている。
この位置からだと中央吹き抜けている部分が見え、
そのおくに、出入り口がある様子もうかがえるだろう。
道路に面する窓には格子をはめて、
京都の町屋のごとく
外からは見えにくく内からは見えやすい環境を作っています。
玄関は階段を数段下りたところ。
軒の出が大きく玄関と階段スペースを覆います。
ここは高台なので雨風のあたりが強く、
屋根を極力、張り出して
雨落ちを壁から離し自然に対応します。
屋根の側面、破風といいますが、
ここも屋根材と同様ガルバリュウム鋼板で仕上げ、
デザインと「長持ち」を兼ね備えています。
道路とは反対、川に面するバルコニーです。
庭側と川側で手摺の高さを変えています。
川側は敷地から更に5メートルほど下がったところを
流れているので10メートルを超える落差があり、
安心感のためにも高めの設定にしています。
このように高い場所にある事が画像でもうかがえると思います。
ところで、反対側の山にもいくつも住宅が建っていますが、
この中で、もう30年近くまえ
新築時に携わらせていただいたIKe邸があります。
しばらくぶりでお訪ねすると、
元気な、お姿で奥様が出てこられました。
建物も設計時の本体は変わっていません。
ほっつ!
ここも斜面地で地中に
直径1.2メートル深さ5メートルほどの杭が埋まっています。
道路が完全でなく位置指定道路の申請から始め
そのときの苦労がよみがえってきます。
開業して今年は31年目。
たくさんの建物に関わらせていただきました。
不思議とプランがそのまま浮かんできます。
居間の画像です。
右端に見える木の部分には書斎が広がり見えませんが、
手前はキッチン。
ともに居間とは一つの大きなスペースで
べんがらを塗った小屋組みで覆われています。
手前、南側の開口部は絞っています。
朝方は右、
東側書斎の窓から居間に光がさんさんと降り注ぎ
昼間は手前、南側キッチンの窓から、
夕方は夕日が左、
西側のバルコニー(前回画像をご覧下さい)から、
居間にあふれます。
したがって画像中央の窓の明かりは北側ですが、
なぜこのように明るいのか?
、、、答えは北側隣家白壁の反射です。