新築住宅
静岡函南U邸 (2014年竣工)
昔は富士山がここからよく見えた!
北側の庭に向かってコーナーを開け放つ
廻り縁のついた座敷、そこから見えるのは
杉や桧の木立、おまけにその後建った隣家まで見え
昔日の面影はない。
人の背丈ほどだった樹木が何十年もたつと
すっかり視界を覆ってしまう。
そればかりか枯葉が屋根に積もり雨漏りの原因を作っていた。
でもどこかないかな?
ちょっとでも見えるスポットが!
そんな思いで古家の屋根に上ると、あった!
木立の隙間越しに、望むスポットが!
そこまで富士山にこだわらなくても
屋根のてっぺんから東に視線を移すと、
雄大な箱根の連山が眺められるではないか!
南側も鬱蒼とした林になっていたので
少し樹木の伐採が必要だな、
北の景色に重点を置きつつ
南の陽光も取り入れるプランにしよう。
だが樹木の伐採費用以上に頭を悩ますことがあった。
なんと道がない。
昔、古家がたっていたころは
適当だった敷地割がその後の変化で
近隣まで家が建ち
きずいてみると道路だったところが
ハイキングコースになっていた!
何とか土地を道路状に買いまして
現行法規で確認申請が通る形にしたものの
そこからは資材の搬入が望めぬ傾斜地。
これはもうハイキングコースを拡幅してを道路にして
資材を搬入するしかない!
建築の費用が樹木の伐採、道路の敷設へと、削減されてゆく!
予算の制約は今までで一番厳しい部類に入る。
旧家の基礎を利用できないか、残土は敷地内で処理できないか、
人力で資材を運ぶよりやはり道を作ったほうが安上がりか
などコストとの奮闘が始まる。
前回の画像は玄関の大戸を中心に眺めていた。
今回は少し東側に回り込んでみている。
すると正面の画像だと見えなかった
背丈のあるコンクリート基礎が
右手に見えてくる。
つまりこの建物の裏側へと敷地は傾斜してゆき
それは麓まで続き、その間傾斜にへばりつくように
いくつもの別荘が建つ。
富士山は?といえば中央白い扉の後ろの方向にある。
右手には箱根の連山を望む。
先ほどのコンクリート基礎の上は浴室で
その箱根連山へと展望が開けている。
2階のガラス面が北側になり
ここから箱根連山が見渡せる。
富士山は西日を浴びる右側の樹木の方向だ。
ご覧のように
敷地はかなり傾斜しており、
一番基礎の高いところで
2メートルある。
この基礎も旧家屋の物を再利用し、
コンクリートを流し込む
型枠としてもとらえて、
内側に新たな基礎を作り補強している。
1階の手前角は浴室になっており、
近くの緑や
箱根連山を遠望する。
浴室外部にバルコニーがあり
火照った体を夜分、
陸風にさらす
外観の画像を3回にわたり紹介したが
姿が異なるので
全体の形はつかみずらいと思う。
それゆえ
今回は全体の模型です。
このように建物は
くの字に折れ曲がった形となる。
前回のブログで2階のガラス面は
北側になると書いたが
この画像も建物の北側を写している。
ちょうどくの字に折れ曲がったあたりの
ガラス面から
富士山が見えるはずだ。
南箱根、最初のブログで紹介した南面と、
手前画面下が西面になる。
南面の画像を見れば単なる
片流れ屋根のようにも見えるが
裏手でこのように折れて
3面に屋根が分かれている。
その3面が点で交差する
画像の中央付近のポイントは
複雑で
プレカットではなく
大工の手刻みによる。
週末住居であるため、3家族が
同時に宿泊する事を想定している。
全体が大きなワンルームだけれど
3つのゾーンに間仕切ることができる。
写真手前のゾーンと正面白い扉で
塞がれたゾーン、そして、
その上の2階部分だ。
したがい写真のダイニング
スペースは家の中央部にある、
というのが全体の構成だ。
右手の光を受けているスペースは
玄関。
左に見える2階への階段は
建物形状に沿って折れ曲がる。
2階から階段を下りてくるときに
ガラス窓から
富士山を垣間見るポイントだ。
階段下、奥のゾーンには
バストイレなど
水回りが備えられ、
各部屋から独立したアクセスが取れる。
南箱根のコッテイジ7
前回6番目の写真撮影位置から
ダイニングテーブルに近づいて
写したもの。
正面の白い扉は右側の壁に
引き込まれ
写真の様な別室が現れる。
通常はこのようにダイニングと
一体化して使用されている。
既存家屋の和室で使われていた
書院の建具と欄間を
2階ゾーンに使っている。
以前の建物ではその和室に
子供たちがごろ寝状態で宿泊していた。
このように建物が新しくなっても、
子供たちの記憶とつなげることで
新しさ、よそよそしさを
和らげている。
木部の多くはオスモ、
テーブルはワトコオイルとし
ベンガラは今回階段の手摺壁や
ダイニングテーブルの
腰板部分に限定している。
南箱根のコッテイジ8
昨日の写真より
少し右の玄関側によって撮影した。
屋根を支える梁組だが
模型写真で見てもらったように
上から見ると
くの字に折れ曲がっており
木組みにも工夫がいる。
如何にシンプルに、美しく見せるかが
ポイントになる。
建物中央のダイニング部分は
吹き抜けとなっている。
よって手前と奥から、梁や母屋が吹き抜けに
張り出して屋根を直接支える垂木を
受けている。
中央のオスモを塗った板壁にみえる
梁は2階床を支えるほかに
吹き抜けまで伸びてきて、はねだし
先端に束という小柱を載せている。
小柱は小屋梁を支え垂木を受け
全体の木組みが成り立っている。
全体が板壁になってみえるので
どれが柱で、どれが梁かわかりずらいが
水平と垂直を意識してみてください。
すべて現れています。
南箱根のコッテイジ9
屋根を支える木組みについて
前回述べたが
補足して
今回はキッチンを正面から
見た画像。
屋根の木組みに注目すると
奥から手前に向かって
3本の梁が飛んでいる。
左手、間仕切り建具レール溝の入っている梁、
右手の小柱で支えられている梁、
この二本は水平だが
中央の梁は奥から手前に向かって登る。
画像では見えないが、最終的には右側の梁と合わさり、
屋根の折れ曲がるポイントになっている。
南箱根のコッテイジ10
前回のブログでは
写真右手の梁が中央の梁と合流すると書いたが
実際どのようになっているのか
今回は説明の画像です。
前回を北面とすれば、正反対の南面を見ている。
前回同様、中央の梁位置は変わりなく
前回右手だった梁は今回は左手になり
中央の梁に寄ってきている。
左手の梁はそのまま壁をいったん突き抜けて
更に伸びて屋根の屈折ポイントを外側で造る。
右手の梁は間仕切りの鴨居をかねて
3つの個室のうちの一つとなっている。
正面左手の光を浴びている壁は
玄関入り口ゾーンだ。
手前はダイニングのテーブル
IHが埋め込まれている
南箱根のコッテイジ11
これから住宅を建てようとなさっている方は無論
建築全般に関心を寄せる人々も
増えているように思う。
先だっても30人ほどの仲間で
著名建築家のホテルを案内したが
何人かの方々から説明をうけて
より建物について興味がわいた
との感想をもらった。
このブログのように
建物の説明をして
はたして何人の方が興味を示してくれるか
知る由もないが
続けましょう。
今回は前回の写真右手に写っていた窓を
拡大したもの。
右端の換気用の窓には
網戸となっているが
普段はガルバリュウムで包んだ
白い板戸で
ここだけ閉じられている。
閉じると壁のようになり外が見えないし
3分割されていた窓が上下2か所に減る。
が逆にあけた時は
壁が撃ち抜かれて窓になった!
程の解放感が生まれる。
南箱根のコッテイジ12
前回画像の窓を左に見ている。
板戸は開いた状態だ。
撮影位置から奥が個室になり
手前で間仕切ることができる。
エアコンの設置位置には毎回工夫が
要求される。
今回突き当りのエアコン設置の背面の壁は
その下の窓やエアコン下の白い扉の面よりも
奥まっている。
つまり窓から上の壁は外に出ている。
南箱根のコッテイジ1の画像の左端に
その様子を見ることができる。
室内側には奥行きのある陰影を造っている。
建具上には梁を水平に回しているが、
よく見ると高さが違う。
通常は高さ270×巾120の梁を回すが
左手の窓では120×120、正面は120×270、
そして右の太い梁は120×450
それほど背丈の必要な場所ではない。
けれど、南箱根のコッテイジ9
の画像を見ればわかる。
左手から伸び、屋根を支える登り梁を受ける為
この高さが必要なんだと。
見た感じも太く、逞しい
南箱根のコッテイジ13
前回写真の右手を、
今度は正面から見ている。
実際より広めの写真だったが、
今回は現実のスケールに近い。
45㎝の高さを持つ梁が
正面に見える。
天井は茶色に素地塗装を施しているが
計画当初は素地のままであった。
床板や建具の小口が木の素地で
天井まで素地だと
明るすぎて
室内が見えすぎて
狭く感じる。
暗めの方が空間の広がりを感じるものだ。
南箱根のコッテイジ14
今回は東側の個室を見ている
このブログのコッテイジ7
の画像をご覧いただくと
ハンモックが見えている部屋がここだ。
天井右手にレールが見えるように、
右手のダイニングとは建具で間仕切るが
通常はオープンにして
ハンモックを楽しむスペースにしている。
揺られながら、
1階や2階の窓から
鳥のさえずりに耳をそばだてる。
近くのテニスコートからは
ボールを打ち合う音も。
そのうち日の向きが移動して
夕刻になると、
白壁がだんだん赤みを帯びてくる。
このように
天井に太い梁が出ていると
ハンモック吊るのも容易だ。
南箱根のコッテイジ15
南箱根のコッテイジブログも今日で
15回目で今日は15日。
画像は前回の右側を正面から見ている。
3枚のポリ合板フラッシュ戸
三枚を左端の壁に寄せたたむと
ダイニングへと開放する。
小口を白木で抑えただけの普通の
ポリ合板フラッシュ戸であるが
これとてオーダーメードであるので
既製のプリント合板ではない味わいがある。
取っ手もステンレス小丸や角を削り込んだ
ユニオンの30センチ程も背丈のある
引手にすればもっとかっこよく
デザイナーでござい、の建具になるのだが
このシンプルさが良い。
ただ壁天井が白だと
この建具の味わいは同じものでも
出てこない。
床壁天井、材の組み合わせで
初めてあらわす。
南箱根のコッテイジ16
前回の白い扉を開けると
こんな感じになります。
今まで話してきた
屋根のこう配
それを支える母屋
や梁などが
この画像だとはっきり見えてくると思います。
ちなみに
このような梁組を
日本の美の一つとする
展示会をおこない
19日まで、玉川高島屋本館6階
インテリアフェスティバルで紹介しています
AAスタジオという
建築家の集まりで
私以外も何人かの建築家が
作品を展示しているコーナーがありますので
リフォームや新築に関心のある方は
是非ご見学いただきたいと思います
明日の18日は私とAAの青木さんが
リフォームで人生が変わる
というテーマで話します。
13時と15時
最も会場は狭いですが、、、、
先着5名ぐらいかなぁ?
南箱根のコッテイジ17
前回ブログの画像では小さかった
センターテーブルも
近づいて撮るとこんなに大きく、
前回とは全く逆からの
撮影でテーブル上の
IHコンロの延長がトイレのドア
その右手に白く光る壁は
洗面コーナーを隠している
2階へと右に折れ曲がって上る
階段も中央に見える。
このように屋根を支える構造体
を見せる事は天井を張ってみえなくし、
すべて隠してしまうより
手間がかかる、見えるから
美しく仕上げなくてはならない
それだけ丁寧に手わざで作りこむ
必要がある
が、そこにこそ
想像力もわき
癒されもするポイントが
あると思う。
南箱根のコッテイジ18
テーブルを超え
前回の画像より階段に近づいた。
ここまで来ると
突き当りのトイレ入り口が
物陰っぽいところに仕込まれている、
その様子や右奥に
明るく解放された
なにか別のスペースが
広がっていそうな事が分かる。
手すりも兼ねた
階段の壁は実に薄くしているが
厚みが3センチの合板を
立て、
切り口の角を取って
持ちやすくしている。
ベンガラで塗られた手摺壁の先は
2階の白壁にぶつけず
間をすかせ
奥へと誘う。
南箱根のコッテイジ19
これは浴室の画像です
前回
「奥に何か別のあかるい空間が広がっている」
としたところ。
階段わきを通り
明るさにつられて
歩を進めて行くと、
このような
開放的な浴室となる。
浴槽と床、壁はFRPで
一体化した造りになっている。
外の緑を見ながらの湯あみを楽しむ。
左、外にはバルコニーがあり
ここからの景色は圧巻で
下界を見下ろすような
お立ち台のスペースであり
まじかに
箱根連山を眺めることができる
南箱根のコッテイジ20
さて
2階へと進みましょう。
階段を少し上がったところの画像
白壁に隠れていた
洗面コーナーが
右下に見えてくる。
また建物がくの字に折れている
そのなりに
階段も曲がってゆく。
「ベンガラの手摺壁が2階へと導く」
としたその様子も、
ここまでくれば
はっきりとしてくる。
手摺壁のベンガラ、
天井や梁など構造材のオスモと
2色で対比させている。
塗装工事のオスモはスタッフが
階段周りのベンガラは
藤本が久しぶりに塗っている。
塗った後ベンガラは
乾拭きすると
鈍色の艶が出、かつ
木目がはっきりとしてくる。
光の当たり具合で変化し
横から光を受けたとき
木目は銀色に光る。
南箱根のコッテイジ21
事務所のある横浜のマンション11階からは
隣の10階建てマンションの頭越しに富士山が見える。
冬場の空気が澄んでいるときは特にくっきりと
そのシルエットが夕日に浮かぶ。
2階から階段を見下ろした
今回画像のこのアングルからも富士が見える、、
はずなのだが撮影時はかすんでいる。
数十年前、以前の家が建ったころは
画像の右側に写る隣家も、また遠方の樹木もなく
富士まで遮るものがなかったという。
南箱根ダイヤランドに定住する人は多いと聞く
環境ばかりでなく地域に住む人も変わる。
人も変われば、いずれまた大パノラマを、
この階段を下りながら
眺める時も来るかもしれない。
南箱根のコッテイジ22
最近はカメラの露出を室内に合わせ
何枚か微妙に露出を換えて写し、
今度は外の光に合わせ
同様に異なる露出の写真を撮る。
内外適切なものを組み合わせて
再合成する画像ソフトがあるそうだ。
中から外までが同じ明るさで続づく。
いつか使いたい気もあるが、
そのソフトのせいか
外が見えすぎる写真に出くわす。
やはり嘘くささもあり
遠近感に乏しい写真となってしまう。
その辺はテクニックなのだろうけれど。
ところで画像は2階部分だ。
ガラス面の延長上に階段があり
天井の傾斜なりに窓に沿うて降りる。
もう少し外が遠くまで、
続いて見えればいいがなぁ。
景色が白く飛んでいる部分は空ではなく
箱根の連山が見える。