新築住宅
神奈川南区N邸 (2013年竣工)
今日からは横浜の南、
高速道路沿いに建つ家。
ダンシング バタフライ
と名づけたのは、
外観からで
イスカの屋根形状から来ている。
その意味では洲崎の町屋に近い。
が、もっと踊るような
躍動感があり
二つの片流れ屋根が交差する
V字谷のラインが
背骨のように
室内に現れている。
故意にではあるが、敷地の特殊性から
生まれた形だ。
とはいえ、
とりあえずこの画像、
2階の物干し場なのだが
片流れの大屋根を支える柱は四角ではなく
丸太にしている。
またベンガラを塗らずに白木とし
上の屋根と下の手摺とは離れているように見せる。
軒裏にベンガラを塗ると、光の反射で
このように鈍く光る。
その独特の輝きが魅力になっている。
道路から眺めた外観で
この屋根をダンシング バタフライと
もったいぶって呼んでいる。
洲崎の町屋と若干屋根の傾きが違うだけで
動きが出てくるから不思議だ。
前回見た物干しバルコニーの
角柱(丸太)もこの位置で眺めると
アクセントとして効いている。
黒色部分はベンガラ塗料だが
赤から黒まで種類があり
今回はいちばん黒に近いものを
塗っているせいか、
この白木部分は良く目立つ。
門はグレーの煉瓦積み。
建具や袴、小屋根などの素材は
母屋と同じものを使用し
白木の引き立て役に加わっている。
前回画像はガレージ部を敷地の外から見ていたが
今回は中に入って見返している。
門入口建具の構成は4枚で
右端のみがドアで手前に開く。
手前のコンクリート土間部分は
道路の傾斜にそって勾配を取っており
内に開くと土間床に下端があたる。
そのため建具下の袴のこう配を
きつくすることでそれを免れている。
左手の3枚は引き戸なので
道路傾斜にのっとった勾配をとれる。
三枚の引き戸は右端ドア前に寄せられ
間口を広くし
車庫入れを容易にしている
門は母屋と同じガルバリュウム、
ベンガラ仕様だが
煉瓦は門のみの素材だ。
煉瓦をロノ字型に組むことで
門柱を構成する。
なかなか味のある煉瓦で
世界遺産となった群馬県の
富岡製糸場ではないが
柱は木、壁は煉瓦の
木骨煉瓦造などに使えば
さぞ映えるに違いない。
子供たちが遊びまわるスペース
Dancing Butterfly の
屋根の形がこのように
そのまま2階の室内に現れている。
実はこの建物
平面の形もVの字になっている。
その影響もあり、Vの文字の
交差する部分は平面的にも
立体的にも変化に富み、
子供たちも喜ぶ。
左下に階段が見えるが
この階段室の吹き抜け部分も
外に向かって開く
V字の形をしており
階下の奥まった玄関ホールへと
光を導いている。
玄関の画像だ。
正面は大型の玄関戸であるが
開けて左手の室内が土間続きの納戸になっており、
自転車など大型の収納も可能としている。
2階の物干し台がせり出し
下に玄関ポーチを創っている。
柱はアクセントでベンガラを塗らない。
上部物干しの構造はこの柱と
上部の梁をはねだし
構造体全体で持たせている。
ガレージが多くのスペースを閉めている為
玄関までのアプローチが
殺風景だが
写真右下に以前の家にあった庭石を利用して
洗い出しの仕上げの中に組み込んでいる。
前回の玄関格子戸を
室内側から見ている画像だ。
平面の形がVの字であり
壁の振れがこのように歪んで現れる。
ワイドレンズのせいではない。
右の黒ベンガラの大戸が
土間続きの納戸だ
沓脱石は大谷石を使用、
室内にも杉丸太の柱を
シンボリックに扱い和の雰囲気を創る。
床は檜の縁甲板
階段はさらに厚みのある檜を使う。
木部をすべてベンガラで塗るのもよいが
このように塗らず、白木の明るく
華やかな感じを
そのまま活かすこともある。
子供たちの動きを見ればわかるが
明るくして自然に
2階リビングに誘われる効果を出している。
今回の写真は
階段に対して
平行に撮っているので
玄関格子戸のある壁との
振れ具合が
分かりやすいと思う。
また
床の縁甲板の継ぎ目を見れば
玄関戸と並行になり
階段とは、ずれるが
丸柱に取り付く
上り框は
床板と直行しており
斜めで受けていない。
階段のササラ板は檜の40㎜厚
その上の幕板はタモの30㎜厚
その上の丸棒手摺もタモで
タモ相互は直径9ミリのチーク材で
緊結している。
今回の写真は
階段に対して
平行に撮っているので
玄関格子戸のある壁との
振れ具合が
分かりやすいと思う。
また
床の縁甲板の継ぎ目を見れば
玄関戸と並行になり
階段とは、ずれるが
丸柱に取り付く
上り框は
床板と直行しており
斜めで受けていない。
階段のササラ板は檜の40㎜厚
その上の幕板はタモの30㎜厚
その上の丸棒手摺もタモで
タモ相互は直径9ミリのチーク材で
緊結している。
階段や手摺の様子を
少し近づいて見ると手摺をつなぐ
チークの丸棒もはっきりする。
手摺とタモの幕板と
檜の階段板を支える
ささら桁の先端の出を
微妙に変えて
美しく見せようと試みている。
一段目には
桧の厚板の間に竹を入れ
意匠とすべり止めを兼ねている。
今回は
階段を2階から俯瞰した画像。
床板のラインが
階段と並行になっていない。
建物の平面形はV字に広がる扇の形で
そのかなめの位置に
玄関ホールや階段がある。
床板のラインに沿った領域と
階段のラインに沿った領域とが
この玄関ホールで
合体して
台形状の吹き抜けが生まれる。
その中に納まる
階段を上ったり、
降りたりする際にも
角度の振れで
気分さえも変わる。
台形状の吹き抜け?
と言ってもわかりずらいが
少し下がって
写した画像で見ると
その様子が
お分かりいただけるのでは!
吹き抜け内のかべは
手摺の高さで
その上には
竪格子の飾り棚が載る。
前回の画像を下から見上げると
こんな風に!
階段室吹き抜け
が手前側に広がっている。
壁が振れているうえに
立格子の飾り棚も
壁と直角に位置ていないため
様々に角度のついたラインが
ここに集まってきている。
上部には
勾配のついた屋根組も現れ
さらに斜めの線を増やす。
Dancingとは外から見た
屋根の形の事を言っているのだが
線が複雑に混ざったこの状態も
Dancingだ!
今回は
階段1段目の
廻りの様子だ。
つまり玄関なのだが
右端のシューズクロゼット
との仕切りが
ギャラリーウォールになっている。
左奥
陰になっている
玄関戸を開けると
正面にこの白壁の絵が見える。
セミオープンの
シューズクロゼットだが
乱雑に靴を脱いでいても
ギャラリーウォールのおかげで気にならない。
階段の
玄関側を映した画像です。
玄関の落ち着いた光に対し
階段側は随分と明るい様子が
ほんの少しですが
分かります。
玄関の床は
小粒砂利の洗い出しで明るく。
正面のベンガラ塗の袖壁には
鏡が設置され
靴を履いた状態で
出かける前
服装の
最終チェックをします。
今回の画像は鏡と床の詳細です。
鏡は両サイドに
2本の黒竹をあしらい
切り口を抑えている。
ベンガラと黒竹は味わいのある
組み合わせでよく使う。
床の洗い出しは
「ヤブ原」の玉砂利仕上げ、
柱の沓石も同材で
造り出している。
さて
玄関から階段に戻りましょう。
前回の鏡のある袖壁を背にすると
この画像となる位置で写しています。
2階正面には
葉山のガラス工房デューさんの
ステンドグラス。
色が飛んでおり
何回か前のブログで
この廻りで少女たちが飛び回っている画像だと
もう少しはっきり色が出ていると思います 。
1階は中庭からの光がさしています。
中庭を正面に眺める位置
つまりこの階段の右手の壁の部屋なのですが
和室があります。
この画像については次回
ご覧いただきます。
中庭に面している和室の画像です。
モダンな感覚だと
障子を天井まで上げ
(この場合は梁まで上げ)
小壁を設けない。
しかし、
下がり壁が付いた方が
和室としての落ち着きが出てくる。
組子を2本の吹き寄せにして
障子はモダンな印象にしている。
また壁も天井のトーンに近づけ
グレーを選び、
実に幽玄な雰囲気を出している。
今回は明り障子を全開した時の画像です。
奥の障子は
板戸と組み合わせ
茶室の雰囲気を出しています。
グレーの壁と
黒紫のベンガラ色
襖や障子の白
などで落ち着いた和室を構成します。
写真は
和室の奥にある洗面化粧室。
隣家の視線を避ける為
窓は天井近くに設置している。
洗面器はカウンターではなく
独立させているが
カウンターの水はねを
気にすることがない。
床に跳んだとしても
大理石なので
モップで拭けばよい。
洗面ボウルも大きく豊かな気分になる。
朝のひと時
一日のスタート
気持よく顔を洗うことも大事なことだ。
壁は漆喰
腰壁はガルバリュウムの板金加工
これは水廻りで良く使うが
漆喰の壁と連続して使う際
言われて初めてわかるほど
ご覧のように
素材感がよく似ている。
ただし壁の板金加工については
優秀な職人の腕によるところが大きい。
2階のリビングへと向かおう
ステンドグラスの手前は
踊り場になっており
左に行くとリビングだが
右にもゆけて
個室につながる。
床段差のついた
リビングが
写真の奥に見える。
階段の手すり
タモの幕板
桧の階段など
大工 植田さんの技がさえる。
たしか
Dancing Batterfly 10
だったと思う。
階段を見下ろしている
写真だが
そこに写る茶色の格子部が
今回正面に見える。
さらにこの画像では
Dancing している屋根形状も見ることができる。
また後ろにはキッチンも
少しだが顔を出している。
床は檜板だが
キッチン部分は大理石で仕上げている。
前回の写真を少し引いて写すと
このように
屋根のV字形がはっきり表れてきます。
奥の格子戸
右側を開けると別室への通路であり
左側を開けると冷蔵庫置き場に。
ここからは見えないけれど
格子戸の上、白壁部には
キッチンストッカー兼用小屋裏物置
が装備されていますが
普段は子供たちの隠れ家。
前回より少し角度を振ってみた写真
V字型屋根の谷の部分に沿って
垂木をそのまま下に伸ばし
化粧垂木として意匠的に見せている。
ここの屋根は2重になっており
幅の広い谷として雨水を排水する。
奥のキッチンもこの角度だと良く見える。
飾り棚の裏側から
ダイニングやリビングを見ている。
この位置は
バタフライ屋根の真下でもあり
屋根形状の変化が端的に表れている。
濃紫や白の腰壁で囲まれたスペースが階段室。
飾り棚のカウンター部は
腰壁から浮かして固定させ
軽やかに見せている。
写真右端に例の飾り棚が見える。
手前がダイニング。
奥がリビング。
床が1段上がっているのは
隣地に建つ建物の屋根越しに見える
遠方の眺めを確保するため。
でもあるが、
リビングとダイニングを柔らかく区切る役目もある。
家具がなくて殺風景だが
事務所に置いてあった
ヤコブセンのアントチェアーをおいて、
窓や天井の高さ床段差の寸法など
判断する際の目安としている。
前回の写真は天井の高いリビングだったが
今回はバタフライの谷
一番低い階段室ゾーン。
白い部分は漆喰の壁。
濃紫色はベンガラで天井の他
白壁脇の建具にも使う。
クリアーをかけて艶を出すこともあるが
通常はこのように
ベンガラを塗ったままの素地仕上げ。
かわいた布で磨くと鈍色に光る。
今回は生活感の出た写真です。
奥に昨日の白壁とベンガラの建具が見えます。
手前のテーブルは関家具
椅子は高山ウッドワークスのハイバックチェア。
岩倉榮利のデザイン。
少しクラシックだが背後の飾り棚とも合う。
モダンでシャープな「スリット」も好きなデザイン
このインテリアにも合いそうだ。
前回の写真
奥まった白壁
脇の建具を開けると別の空間が広がる。
壁はグレーで京壁の「鼠土」仕上げ。
クライアント同様
私も気に入っている。
柱と柱で囲まれた壁を
白やグレーで塗り分けると
モダンなイメージが強くなる。
たとえば
近代建築のはしりリートフェルトのシュレーダー邸(1923年)
は外壁面を白とグレーに塗り分け
更に
黄色や赤の差し色をアクセントに外観を構成している。
フラット屋根のモダンなたたずまいは
現代の建築家たちがこぞって採用する
アイテムに満ちている。
前回写真の右端に
黒のサッシがわずかに見える。
今回の画像でいえば
左端にある
黒のサッシがそれだ。
このようにキッチン脇から
物干しバルコニーに
出ることができる。
バルコニー床は
1階玄関ポーチの屋根になる。
すのこ状に床をつくり
光を下に落とすとともに
すのこの小口を外に現し
手摺など水平材ばかりの表現にあって
変化を付けている。
なおここは準防火地域なので
屋根部梁上の野地板は
厚さ30㎜の合板を使っている。
今日は前回に続き、物干しバルコニー。
グレーの壁と、天井や床の濃紫ベンガラ
そして日を浴びる白の掃除流し。
楽屋裏的スペースだけれど美しく見える時がある。
屋根の所在と深い軒、道路から
見上げる人の視線をカットするための
幅広の手摺板、などが、陰影をつくり
光のコントロールに役立っている。
一方、床は簀子なので風の通りは良く
物干し機能ばかりでなく、
屋外の憩いの場所に変化する。
画像は個室の物。
壁をグレーにし、天井もベンガラの濃紫
と昨日と同じだが、
南側敷地境界に隣家が3階建てで迫る。
そのためあまり大きな窓を開けられない。
そのためもあるが明りはかなり抑制されている。
壁天井床も白にしてしまう
モダン建築であれば、
このくらいの大きさの窓でもよいが
上記のように暗くする仕上げ材の
選択になっている。
暗いという意見もあるが
明るすぎるモダン建築に比べてであって
適度の癒される、落ち着きのある
明るさになっている。
昭和や、大正、明治の建築を調査するたびに
何とも心休まる気持ちになる、
原因は何か?
その一つは明るさにあると思う。
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