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日本の美を伝えたい 591

世田谷のコッテイジ増築記事最終回

 

世田谷のコッテイジを増築して16坪の建物が42坪に変貌し、ガーデニングのゲストハウスが4人の多世代同居住宅に姿を変えたことを約50回にわたって語ったわけですが、今日で最後にします、次回からは別のネタ?で。

最後を飾るにふさわしい写真かもしれません。今回工事中の写真を敢えて載せます。

新旧のジョイント部分です。

ガーデニング用の小さなコッテイジだったころは道路まで庭園が広がっていました。その半分を建物が占め、裏手の庭にも増築し、新たな息吹を吹き込んだ建物になったわけですが、心がけたのは、自然に見える事。

かなりの大手術だったわけですが、手術の痕がわからないくらい自然な姿を見せたかったことです。

 

写真の説明をしますと、コッテイジ部の屋根は垂木を室内に見せる構造、それが増築の為、途中で寸断され、明るく日を浴びるスペースが生まれています。がはたして自然に見えるか?!

1/3取られた屋根に代わって奥の増築部と繋がる2階のブリッジが天井のように現れています。

屋根という覆いを剥がされ、2階窓からの光も豊かに差し込みます。残りの2/3の屋根は原型を残す。

部屋の用途は変わっても、コッテイジだった頃、仲間とガーデニング談議をした記憶も残します。

なにもブリッジにせずとも屋根を取り払って床を張って2階に増築すればいいじゃないかとも思いますが

そうはしない。外に出て中庭から見ると圧迫感はこの上ないだろうし、屋根面が中庭に向かっておりてくる、地上近くまでさらに絞られて、降りてくる、そのスケール感ゆえに、小さくなった庭園に迫る総2階ではない、開放感と天空の明るさをもたらしています。その効果もさることながら中庭に向かって屋根が降りてくることが自然の理にかなっていると思います。

 

そういえば外観についてですが、コッテイジ部はもとに近い西洋風モダンを残し、道路へと抜ける増築部は和風モダン。壁の色はと言えば、旧コッテイジ部はシッケンズのブリティッシュグリーン、素材は木、増築部はべんがら色の塗り壁と濃紫べんがら色の角波金属サイディング、と、、全く自然でない!?

中庭からはコッテイジのガラスとシルバーの屋根面しか見えないことを指し引いても依然、違和感は残りますが、コッテイジ部はコッテイジだった頃を残し、増築部は明らかにその後加えられたものであるとわかることが自然なのだと思います。

近所の家の形は違うし、色も素材も違うのだから、むしろ違った方が自然に見えるともいえますね。

 

「自然」の意味合いですが、思いだすのは芭蕉の言葉で「静かに見れば物皆自得す」という言葉です。

確か高校時代の古文の授業で登場してきました。いまだに気にしている言葉です。

今回のプロジェクトに当てはめるなら建築主の思い、敷地環境、ゲニウスロキという地霊、歴史、予算、工期などのファクターの間を漂いつつ、生を受けた建物、それを使う人が得心して謳歌し、それが建物の表情、相に現れる。そこが自然に見える所以だと思います。

 今後ともこのような建物を作ってゆきたいと思います、興味のある方は是非!

ご連絡をお待ちしております。